プラネタリウム作りのことを人に話すと、決まって「なんでそこまでして作るの?」という質問がかえってくる。星が好きなのはわかる、自分だけのプラネタリウムを作って動かしてみたいというのもわかる。星が好きな人なら、一度や2度は、プラネタリウムの解説者にあこがれたこともあるだろう。だけどなんでそこまでして・・・?
確かに僕がプラネタリウムのためにそそぎ込んできた代償は常識の範囲を超えている。今回の3号機(アストロライナー)だけで製作時間は4年間。総工費は初公開までの分だけで200万円を軽く越え、そのために大学を一年休学・・・・ふつうの感覚では理解に苦しむのも当然だろう。 星を好きな人はたくさんいる。それは世の中から見ればややマイナーではあるが、趣味にあってアマチュア天文という1ジャンルを形成している。つけくわえれば、日本のアマチュア天文家のレベルは世界的に見て非常に高い。昨年世をにぎわせた百武すい星のように、新しく発見されるすい星に日本人の名前がつくことも多いこともその現れだろう。さらに、中には山奥に仲間を集って私設天文台を建ててしまったという人もいる。天文台顔負けの写真を撮る人は大勢いる。そして、こういう人たちを記事などで見るにつけ、ああ、たぶんこの人たちは本当に星が好きで、それが高じてあれほどの活動になったのだろうな、と思う。でも、僕自身はどうなのか。正直、彼らのような存在を見るにつけ、自分が星が好きだと胸を張る自信はまるでなくなってしまうのだ。 アストロライナーが完成してからは、周りの人に聞かれるだけでなく、テレビや新聞記者といったマスコミに取り上げられる機会が何度か出てきた。取材ではやはり異口同音になぜプラネタリウムを作るのか、その魅力について聞かれたが、後でメディアになった自分は「大平さんは、小さい頃から星が好きで、それが高じてプラネタリウムに・・」といった具合に紹介されている。そこでは、僕は「誰よりも星が好きな人」なのだ。それはいかにもわかりやすいイメージだ。しかし本人としては、どうにも違和感を感じずにはいられない。 ひとつだけわかること。星だけが好きなだけじゃない。いろいろなものに興味がある。その中で、とくにウエイトが高いなと思うのが、モノ作りだ。実際、学校の専門も職業も、天文関係ではなくモノ作りをする仕事、エンジニアの道を進んできた。 星&モノ作り。この接点にプラネタリウムがあるが、一方でそれだけとは限らない。望遠鏡のほうが素直に思いつくだろう。実際、望遠鏡を手作りする人は多い。(最近は市販品が優秀になったことで自作は少数派になったが、それでもまだ健在だし、過去はアマチュア天文活動の主軸でさえあった)僕も子供のころは望遠鏡作りに夢中になった時期がある。だけどいつの間にかやめてしまった。プラネタリウムだけが続いている。 なんでだろう? つづく
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